サイトで掲載中「Fly Again」のサイドストーリーみたいな。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「ヴィス、大丈夫?」
「ああ」
要素の激減のせいでフィス系族は体調不良に陥っていた。エイス系のため、要素の減少にあまりこたえていないロリィと系統も分からない麗で二人の看病をするしかなかったが、ロリィは食事の準備など、身の回りの世話で忙しく、ほとんど麗一人で受け持っていた。特にヴィスウィルはシヴィルの倍以上にきつそうだが、表にはあまり出していない。
「シヴィルも、平気?」
「平気なわけねーだろ。でも兄貴の方が数倍つらいんだからオレにかまってねーで兄貴についてろ」
先ほどまでそこまでなかったシヴィルが急にダウンした。きっとかなり要素が減ってきているのだろう。
横になり脂汗をかきながらもシヴィルは麗をヴィスウィルの方へ追いやる。だが麗はほっときはしなかった。
「何言ってんの。平気じゃないなら病人は病人。つらいつらくないは関係ないでしょ。ほら、こっち向いて」
そう言われて向いた先には、黒い瞳があった。
ビー玉を思わせる透明度。真っ黒より少し茶色のはいった色素。丸く、大きなその瞳に危うく吸い込まれそうになった。
「ヴィスの方が大変だから、とかつらいからだとかで我慢しないでよ。どーせ我慢したって分かるんだからね」
「別にそんな理由じゃねーよ」
「じゃあ何よ?」
「それは・・・」
”二人も看病しているお前の方が心配だ”なんて口が裂けても言えない。
麗は不思議そうな顔をしているが、シヴィルは押し黙ったまま、結局そこで口を閉ざした。
「まいいや。はい、顔上げて」
「・・・っ」
麗は氷水につけたタオルを絞ってシヴィルの額に乗せる。
少し肌に触れた麗の手は冷たく、少し濡れていた。決して暖かい季節ではない。氷水に何度も入れられた手は赤くなっていた。それでも白い肌は名残を持ち、桜貝のような爪は自然に整っている。
少し下を向いた目は長いまつげが覆い、艶やかに伸びていた。
「・・・・・・くそ・・・・」
「え、何?何か言った?」
「何でもねーよ!」
何だこの胸の高鳴りは!ドキッとか絶対してない!してない!兄貴に嫉妬なんてしてないしてない!
シヴィルは自分の中で戦い、平静を保っていた。
芽生えてはいけない感情だと押し殺した。
「シヴィル」
「んあ?」
唐突に麗がシヴィルを呼んだために、間抜けな返事をしてしまった。
「寝なさい」
「は?何で上から目線なんだよ」
「いいから寝て。もうずっと寝てないでしょ」
「・・・・っ」
何で知っているんだ、と眉を寄せる。目はちゃんと閉じていたのでばれるとは思っていなかった。
目を閉じても吐き気や動悸でなかなか寝れなかったのだが、今は麗もロリィもヴィスウィルのことで手一杯だと思い、言わずにいたのだ。
「隠してもばれるって言ったでしょ」
「・・・なんでだよ」
「さあ?適当だよ、そんなの」
自分だけでなく、あのヴィスウィルの体調不良まで見抜くなんて、と常日頃から思ってはいたが、それがなぜかは今ならなんとなく分かる気がする。
「そんなのいいから寝て。今なら少しは楽なんでしょ?」
「だからなんで分かるんだよ」
「適当」
「・・・・ったく、意味分からんやつだな、お前も」
「ガキに言われなくない」
「・・・誰がガキだよ」
「私からしたらまだまだお子様だっての。私に気を使う暇あるんなら休んで」
「・・・・・・・・」
それもばれてたのか。
「大丈夫、ロリィも後でくるらしいから」
「・・・・・・・」
麗は微妙に頬を染め、微笑ましくシヴィルをみていた。
「・・・・・・・・お前あほだろ」
「何でよ」
そこはばれていない。というより気づいてもいない。
きっと自分のことに関するとたちまち鈍感になる病気のようだ。彼女が一番病気なのかもしれない。
でもそれはそれで少し安心した。
これは隠さないといけない感情。
芽生えてしまったものは仕方がないから
「ああ」
要素の激減のせいでフィス系族は体調不良に陥っていた。エイス系のため、要素の減少にあまりこたえていないロリィと系統も分からない麗で二人の看病をするしかなかったが、ロリィは食事の準備など、身の回りの世話で忙しく、ほとんど麗一人で受け持っていた。特にヴィスウィルはシヴィルの倍以上にきつそうだが、表にはあまり出していない。
「シヴィルも、平気?」
「平気なわけねーだろ。でも兄貴の方が数倍つらいんだからオレにかまってねーで兄貴についてろ」
先ほどまでそこまでなかったシヴィルが急にダウンした。きっとかなり要素が減ってきているのだろう。
横になり脂汗をかきながらもシヴィルは麗をヴィスウィルの方へ追いやる。だが麗はほっときはしなかった。
「何言ってんの。平気じゃないなら病人は病人。つらいつらくないは関係ないでしょ。ほら、こっち向いて」
そう言われて向いた先には、黒い瞳があった。
ビー玉を思わせる透明度。真っ黒より少し茶色のはいった色素。丸く、大きなその瞳に危うく吸い込まれそうになった。
「ヴィスの方が大変だから、とかつらいからだとかで我慢しないでよ。どーせ我慢したって分かるんだからね」
「別にそんな理由じゃねーよ」
「じゃあ何よ?」
「それは・・・」
”二人も看病しているお前の方が心配だ”なんて口が裂けても言えない。
麗は不思議そうな顔をしているが、シヴィルは押し黙ったまま、結局そこで口を閉ざした。
「まいいや。はい、顔上げて」
「・・・っ」
麗は氷水につけたタオルを絞ってシヴィルの額に乗せる。
少し肌に触れた麗の手は冷たく、少し濡れていた。決して暖かい季節ではない。氷水に何度も入れられた手は赤くなっていた。それでも白い肌は名残を持ち、桜貝のような爪は自然に整っている。
少し下を向いた目は長いまつげが覆い、艶やかに伸びていた。
「・・・・・・くそ・・・・」
「え、何?何か言った?」
「何でもねーよ!」
何だこの胸の高鳴りは!ドキッとか絶対してない!してない!兄貴に嫉妬なんてしてないしてない!
シヴィルは自分の中で戦い、平静を保っていた。
芽生えてはいけない感情だと押し殺した。
「シヴィル」
「んあ?」
唐突に麗がシヴィルを呼んだために、間抜けな返事をしてしまった。
「寝なさい」
「は?何で上から目線なんだよ」
「いいから寝て。もうずっと寝てないでしょ」
「・・・・っ」
何で知っているんだ、と眉を寄せる。目はちゃんと閉じていたのでばれるとは思っていなかった。
目を閉じても吐き気や動悸でなかなか寝れなかったのだが、今は麗もロリィもヴィスウィルのことで手一杯だと思い、言わずにいたのだ。
「隠してもばれるって言ったでしょ」
「・・・なんでだよ」
「さあ?適当だよ、そんなの」
自分だけでなく、あのヴィスウィルの体調不良まで見抜くなんて、と常日頃から思ってはいたが、それがなぜかは今ならなんとなく分かる気がする。
「そんなのいいから寝て。今なら少しは楽なんでしょ?」
「だからなんで分かるんだよ」
「適当」
「・・・・ったく、意味分からんやつだな、お前も」
「ガキに言われなくない」
「・・・誰がガキだよ」
「私からしたらまだまだお子様だっての。私に気を使う暇あるんなら休んで」
「・・・・・・・・」
それもばれてたのか。
「大丈夫、ロリィも後でくるらしいから」
「・・・・・・・」
麗は微妙に頬を染め、微笑ましくシヴィルをみていた。
「・・・・・・・・お前あほだろ」
「何でよ」
そこはばれていない。というより気づいてもいない。
きっと自分のことに関するとたちまち鈍感になる病気のようだ。彼女が一番病気なのかもしれない。
でもそれはそれで少し安心した。
これは隠さないといけない感情。
芽生えてしまったものは仕方がないから
PR
この記事にコメントする