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サイトで掲載中「Fly Again」のサイドストーリーみたいな。
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「オヤジ、いるかー?」
「よお、イヴァン。まだ生きてたか」

イヴァンは麗とシヴィルと一時別れた後、入り組んだ道を歩き、人気の少ない薬屋に入っていった。人気が少ないにも程がある。店の中にはほんの一、二人しかいない。中も薄暗く、とても繁盛しているとはいえない。
イヴァンは店の店主と慣れた挨拶を交わすと、レジにある椅子に腰掛けた。

「どうだ?調子は」
「どうもこうもねーよ。変わらねぇ」
「はは、そりゃあ良かった」
「何が良かっただよ。こっちは苦しんでるっていうのに」

だが、店主が言うことももっともだった。イヴァンの病気は悪くなるこそすれ、良くなることはない。変わらない、ということは一番嬉しい状況なのだ。

「全く、マリスもとんだ薬屋を紹介してくれたぜ」
「ああ、あいつどうしてる?」
「さあ?バカ弟子たちが最近会ったようだけど、聞いたところによれば元気にSってるらしい」
「まあ、そうだろうな。で?今日は何の用だ?」
「分かってんだろ」

店主はイヴァンの返事を聞く前に戸棚の上のほうから紙袋を取り出していた。用を訊ねるのは社交辞令のようだ。
イヴァンは黙ってそれを受け取ると、中身を確認し、一つため息をついた。

「それで?ヴィスウィルたちは元気なのか?」
「ああ。・・・・いや、そうでもねぇか」
「なに、どっか悪いのか?」
「そうじゃない」
「じゃあ何だ」

店主はいかにもヴィスウィルを知っているかのような口ぶりだ。
それもそのはず、ヴィスウィルとは何度かあったことがある。修行時代にイヴァンはヴィスウィルを連れてここまで来た事があるのだ。さすがにシヴィルは知らないが、話を聞いたことはある。ヴィスウィルも店主を知っているが、古い記憶なのであまりはっきりとは覚えていないだろう。

「お前、誰かから自分の記憶をなくされたらどうする?」
「は?」
「その誰かがもし、お前の大切な人なら?」
「・・・・・まあ、意地でも取り戻させるか、姿を消すだろうな」
「・・・・・・・そう、か。普通、そうだよな」
「だから何なんだ」

イヴァンは今までの経緯を簡単に店主に説明した。イヴァンが人のことを他人に話すなんてそうあることではないが、この店主は信頼されているらしい。それでも、口にしてはいけないことに細心の注意を払いながら話を続ける。そしてそれに勘付かれてもだめだ。世界の運命がかかっているのだから。

「人の内面も薬でどうにかできないかって切に思うよ」
「イヴァン、相変わらず親ばかだよな、お前」
「ほっとけ」

そう言ってイヴァンは椅子から腰を上げ、店の扉を開いた。

「もう行くのか?珍しく早いな」
「そろそろ行ってやんねーと、もうすぐ殺されるだろうからな」
「は?」

意味不明な言葉を残し、イヴァンは店から出て行った。
あの人が意味不明なのはいつものことだ。だから毎回気にはしない。どうせまた愛弟子のことなんだろう。そう確信を得ながら店主は仕事を再開した。



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