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サイトで掲載中「Fly Again」のサイドストーリーみたいな。
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「この薬ですか。引き出しのものって」
「ああ。・・・ってお前、なんで薬だけなんだよ」
「は?他に何も言ってないでしょう」
「あほか。薬には水もセットでつけるだろう普通!気がきかねぇやつだな」
「師匠に気を利かすなんてもったいないことしませんよ」
「いいから持って来い。お前は俺を殺す気か」
「殺しても死なないでしょう、あなたは」

ぶつぶつ言いながらもヴィスウィルは家の中へ水を取りに行った。これが本当にただのイヴァンのわがままならヴィスウィルも取りに行かなかっただろう。冗談めかした口調でも、あまりいい状況ではないことは彼のめったに見られない青い顔色が物語っていた。
水を取りに行きながらヴィスウィルは何とも不思議な感覚に陥った。
今までイヴァンの強さを知りながらもあえて戦いを挑む者がたくさん現れた。それをいとも容易く追い返している(というよりあしらっている)姿を数多く見てきたヴィスウィルやシヴィルにとって、イヴァンは”殺しても死なないだろう”というイメージしかなかったのだ。なのにその彼が見たこともない脂汗をかいている。
化け物だと思っていたものが人間だったのだ。戸惑いもするだろう。

 

 

 

「どうぞ」
「毒でも入れてねぇだろうな?」
「さあ?」

ずいぶん素直に水を持ってきたのを不審がって、イヴァンが怪訝そうに水をいろんな方向から見ている。目で見えるものではないのだが、納得したのか、イヴァンは2つの錠剤を口に入れて、水をひと口飲んだ。
目元が見えないままため息をついて、それからやっと顔をあげる。

「てめぇら、何休んでる。さっさと修行しろ!」
「・・・水に毒入れてやるべきだった・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ついにばれたんだね」
「ん、まぁ隠してるわけではなかったがな。あいつらに言うのはなんか気が引けたし」

当時城の専属の医師であったマリスは、城の近くの家に住んでいた。シヴァナの部屋を提供するという申し出を断ったのは、イヴァンがいるからでもある。

「ねぇイヴァン」
「あ?」
「俺、もうすぐここ出てくけど、どうする?」
「は?なんでまた急に・・・」
「いや、ね。やらなくちゃいけないことができた」
「やらなくちゃいけないこと?」
「よく考えればイヴァンになら分かるはずだよ」

イヴァンは少し考えて、ふと気が付いた。

「・・・あー・・・」
「ね。あんたはどこら辺に行くのがいいと思う?」
「・・・フィス国辺り、かな」
「あ、それ俺も思った」

もうすぐすればこのラグシール国は要素の激減期に入るだろう。そうなったら今回はヴィスウィル辺りが要素集めに行くはずだ。そのときのために、マリスは先回りしてヴィスウィル達を待っておかなければならない。助けを必要とする日がきっと来るから。

「俺がいなくなったときのために、いい薬屋紹介しとくよ」
「それはありがたいな。お前の薬は無駄にまずい。あれわざとだろ」
「あれ、ばれてた?」
「・・・・・・・」

だがそれでもマリスの薬を黙って飲んでいるのはこいつの薬が尋常じゃないくらいよく効くからだ。どんな細工をしているのかは知らないが、さすがはカシス一と謳われた医者だ。

「それで?なんか分かったのか?この病気の原因」
「いーや。なーんも。俺の知識引っ張り出しても、文献漁っても何にも。ただ、あんたのその魔法の使い方に何らかの原因があるのは確かだね」
「そんなん、俺だって分かってる。どういう仕組みかって聞いてんだよ」
「俺の予想としては、自分の系統じゃない魔法を使う分、本来ないといけない分の体の要素が変換されてんじゃないかって思う。でも、万が一それがその通りだとしても、系統以外の魔法を使わないようにすることしかこれといった対策は思いつかない」
「まぁ、そんなとこだろうな」
「こんな病気、前にも後にもあんたぐらいだよ」
「そりゃそうだろ。俺が初めて成し遂げた技だ」

さらっと言う自慢は何も口だけではない。ちゃんと実力も伴っているから諦めがちにため息をつくことしかできない。

「それで?ヴィスウィル坊ちゃんたちには何て言うの?」
「そのまんま」
「ヴィスウィルにならともかく、シヴィルにも分かるかねぇ?」
「大丈夫だろ。あれでいてあいつら頭は切れる」
「ほんと親ばかだよね、あんた」
「俺の弟子だ。当然」

弟子を認めているわけではなく、自分の実力を認めているだけのようにも聞こえる。ちらちらと姿を見せる愛情はどうも歪んでいるらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・そして、二度とこんな技させねぇよ。俺で最初で最後だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、世界を背負うとはこんなことなんだろうか。

分かっていたはずなのに。

 

 

 

 


だが、彼にはその覚悟がもう決まっているのだ。

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